酒を爆買いするため日帰り海外旅行を敢行。危機に陥り中国人に助けられる

無類の酒好きではない。けれども無性に飲みたくなる時がある。徒歩5分にバーやらお酒が飲めるレストランはいくらでもあるが、時には自分の洞穴という名の我が家でまったり宅飲みだってしたい。

コンビニで酒が買えないという状況に置かれてから、仕事の帰りにコンビニでビールやらチューハイを買って一人晩酌をするというシチュエーションにこの上なく憧れる。


あの手軽さが欲しい!

イスラーム国家、ドバイのお酒事情

車とアルコールライセンスがあれば、1時間ほど飛ばして国内にある酒屋までいける。裏ルートの酒の売人を知っていれば、そうした知人を通じて国内の酒屋より安く酒を手に入れることができる。

現状、車もコネもない人間ができるのは国外脱出しかない。ドバイは珍しくも到着ゲートにタバコや酒などの免税店が設置されている場所である。通常免税店が置かれているのは、出発ゲートのみである。

要は、ドバイで働く外国人に対して

「おかえり!国内では酒買えないから、ここで思う存分買ってね」

という外国人労働者への一種のねぎらいなのである。そんなねぎらいの恩恵をうけるべく、ただ空港の到着ゲートの免税店に立ち寄り数ヶ月分の酒を爆買いするためだけに海外旅行をすることにした。

目的地は、ドバイ空港到着ゲート免税店なのでその途中はどこだっていい。むしろ航空券が一番安い場所でいいのだ。

酒の爆買いのためバーレーンでおさんぽ

そんな乱暴な条件により選定されたのが、「バーレーン」である。バーレーン旅行記は別途記載する。そんな「酒の爆買い」というよこしまな理由で国を出発。

スケジュールは以下の通り
8:00 :ドバイ発
9:00 :バーレーン首都マナーマ到着
9:00 ~ 14:30 : バーレーンで時間つぶす
14:50 :バーレーン首都マナーマ発
15:50 :ドバイ着
16:15 : 免税店で酒の爆買い(メインアトラクション)

旅行ではなく、その先にある酒の爆買いを楽しみとして海外旅行をする人などいるのだろうか。そんなことを考えながらマナーマ行きの飛行機に乗り込む。

突然の日本人登場に動揺

すると指定された私の席に先客がいた。靴をその辺に放り投げ、座禅を組むようにし、窓の外をぼーっと眺めている大男がいた。以前はこの手のやつら(意図的に自分の好きな席に座っている)には、「教養のないお方だわ」と哀れみと怒りを感じていた。

しかし、こういうやつらに度々出くわすことにより怒りの沸点温度があがったのか、世界はこんなもの、だと思うようになったのかはわからないが、

「そこはわいの席じゃ」

と無感情でただ声だけを発した。

例のごとく、その座禅野郎は悪びれもせず無言でのっそりと窓側席を立ち、斜め前の通路側の席に着いた。その出で立ちはまるでのろまで気の弱いフランケンシュタインだった。

どうやらフランケンシュタインは外の景色を眺めたかったようで、本来の自分の席に着いた後でもしきりに窓の外を眺めている。

と驚きはこれからである。私が本来の席に着席すると同時に隣席にも人が座る気配が。

ドッドッドッドッド (心臓の音)

一定の条件にしか発動しない緊張が体内を駆け巡った。それは、海外で日本人を見たときの緊張感である。昔からどうも日本人を海外で見てしまうと、私はいろいろ考えて緊張してしまうクセがある。

こんなローカルな中東のフライトでまさか隣に日本人が座る、というこの状況。

今まで日本発、日本行き以外ではほとんど日本人など同じフライトでお目にかかることのなかった私にとっては、異常事態である。

日本人は大体90%の確率で肉眼による全体スキャンで判別がつく。しかし全体スキャンでの判別が難しいときには、別の判別方法を用いる。

判別方法1 2人以上の場合は会話により日本語かどうかを判別
判別方法2 1人の場合は持ち物により判別

この場合は、自然と判別方法2になる。そこでちらりと持ち物チェックをする。すると、横目で確認できたのは、

1.スマフォケース
2. ラインアプリ

この日本人2大アイテムを見せつけられたら、もはや100%日本人である。

ラインはまだしもなぜスマフォケースだと思われるかもしれない。それは今の所、スマフォなどというデジタルケースを大事に折りたたみの手帳のようなケースで包んでいるのは日本人しかみたことがないからである。デジタル機器に対する日本人の愛着具合がうかがえる。

爆買いのはずが・・・危機に陥る

バーレーンについてからの話は先述したように別の記事にまとめるとして、ここで本題のメインの酒爆買いについて戻ろう。

無知なもので、免税店に行けば買い放題だと思っていたため、あれこれこもとどんどん酒を積んで行った結果、免税店の店員に衝撃の事実を言い渡される。

「おきゃくさーん、これあなた1人で持っていくの?しかもスーツケースなしで?これは無理だよお」

*ドバイに持ち込み可能なのは、1人あたりアルコール類4リットル、ビール缶ならば48缶まで
参照:ドバイ国際空港公式サイト

ふと我の姿を見下ろすと、海外旅行にしては不自然すぎるほどの軽装な格好。まるで近所のスーパーに出かけるぐらいの軽い格好である。

そんな旅行とは無縁の格好の人間が、免税店の袋を大量にさげていたらどう思われるだろう?まさしく酒の運び屋である。

事実は、1人あたりで持ち込めるお酒の量が決まっており、1人に許可されている以上の酒を買い込んでしまった私は、それらをカモフラージュするためのスーツケースなども持っていない。

なんと、ここまで来てこんだけしか買えないのかよ!

と思いきや気の利くおっさん店員が、妙案を放つ。

「それなら、他の客と友達になって一緒に税関を通りな。それなら数人分だとみなされるから税関に止められることもないだろう」

確かに妙案だが、この内向人間で、しかもはたからに酒好きもしくはパーティーピーポーしか見えない量の酒をぶらさげて、一緒に税関を通りましょう!だなんて恥ずかしすぎていえない。

私がモジモジしていると、提案者のおっさんは商品を品定めしていたビジネスマン風の中国人に声をかけ出す。

「そこの紳士さんよお、ちょいとこの娘さんが困っているんだが助けてやってくんねえかなあ」

とおっちゃんが諸事情を説明する横で、即興で困ったかわいそうな娘の役を演じる私。しかしその背後には、なんともえげつない量の酒が大量に積まれているわけなのだが。

中国人ビジネスマンはあまり状況が飲み込めていないようだったが、この女と税関を通ってくれというお願いだけはどうやら分かったらしい。

「中国人か?」

と聞かれて

「(すんません)日本人です」

と答える私に、ややがっかりする中国人紳士。こういうとき中国語の1つでもしゃべれると世界中で中国人とつながれるからいいんだけどなあと思ったりする。

紳士達に快諾していただいたところで、すべての酒の会計をすましカートに購入したものを積み重ねる。それを中国人3人と私で囲み、談笑しながら関税の前を通り過ぎる作戦である。

他人だと悟られないように、英語のできない中国人と適当な会話でやり過ごしながら親密感を演出する。まあこんな演出をしなくても、中国人と日本人なので、税関のアラブ人から見れば同じように見えるだろうから問題はなかっただろう、と今になって思う。

中国人紳士たちを迎え入れたのは、1人の紳士のおばとその5歳ぐらいの息子である。特に紳士の中に赤の他人の私がいることに驚くこともなく、つっこむこともなく笑顔で紳士たちを迎える。むしろ私なんか存在しないぐらいの構えである。

時間にしてみればたった1分ぐらいのことなのだが、それでも今回の爆買い企画はこの紳士なしでは成り立たなかっただろうというお礼の気持ちも込めて、12本入りのビールを彼らに手渡しておいた。彼らのためでなく、あくまでいい人でありたい自分のためである。

酒を爆買いする日本人が、まったく酒を買わなかった中国人に助けられるという滑稽なオチに終わった、酒の爆買いツアーであった。しかし酒は満足に買えたのでよしとしよう。


数ヶ月分の戦利品。。果たしていつまでもつか