「海外就職」と聞いてまず思い浮かぶのはいかにして海外で職を見つけるか、ということではないだろうか。かくいう私もドバイにやってくるまではそう思っていた。しかし、本当に大変なのはその後なのである。
海外就職後が大変なのはあまり語られていないため(というか大変なのは私だけ・・・?)、就職後の大変さなんて日本を出るまでは微塵も気にしたことがなかった。だからこそ余計に大変に感じているのかもしれない。下記では就職して1ヶ月間で感じた大変さをまとめてみたい。
1.思った以上に商習慣が違いすぎる
商習慣が違うことは海外就職する人にとっては百も承知のことだと思う。私の場合、逆にその違いを乗り越える苦労だって挑戦だと思って楽しんでやれるぜ!なんて考えていた。しかし実際にその違いに直面するとなんと高い壁に見えることか。
そして予想外に高い壁にぶちあたったとき、その壁を乗り越えようとするやる気すら萎えてくるのだ。思った以上に乗り越える時の負担がかかる。商習慣の壁は思った以上の100倍の厚みがあるようだ。
2.経験はゼロベースからの積み直し
日本での成功体験が世界に出ると途端に通じなくなると悟った時でも書いたが、マーケットが違えばたとえ同じ業界とはいえやり方が異なってくる。
とはいえある程度の正攻法みたいなものは通じると思っていたが、それすらも全く通じない。ゼロから何度もトライアンドエラーを繰り返し、何が効くのかを学ぶ必要があると感じた。
経験や知識ではなく、もっと原理的などうやって問題を解決していくか、成功を導くかというような能力の方がはるかに重要であると感じた。
3.コミュニケーションの違いが結構な負担に
今まで日本でしか働いたことがない私にとっては、通常のビジネスではメール、電話が主なコミュニケーションツール。
大体の要件はメールで済んでいた。しかしこちら(というか私の会社だけ?)では、Whatsapp(LINEのようなもの)がメインツールとなっている。
もちろんメールも使うのだが、意外に大事な会社連絡事項やタスク支持などもWhatsappで流れるので、仕事中にも携帯をいちいちチェックしなければいけないという面倒さが発生する。
たまにあのタスクどうなった?とか聞かれると、そんなこと言われたっけ?とふとWhatsappの会話を見直すとちゃっかりそんなことが書かれてあったり。
仕事コミュニケーションにおいては、Whatsappを見ることも期待されているうちに入るようだ。Whatsappを使ってこういうビジネスの連絡をするのは当たり前なの?ととなりの美人パキスタン人に聞くと、
「そりゃあ会社によっては違うけど大体使っている人も多いよね」
という回答。そもそもWhatsappの使い方もよくわかっていないレベルで、常にチャットが入ってくる状態なのでみんなに追いついていくのが大変。気づいたらかなりの頻度で携帯を見るようになっていた。
おかげさまで目と頭が痛くなるという症状になる。なんだかソーシャルメディア中毒になっているアメリカのティーンの気持ちが少し分かるような気がした。
4.英語
今までも外資で働いてきたためそれなりに英語で仕事をすることは問題ではないと思っていた。が、ここに来て自分の英語力のなさに気付かされることになる。
細かい部分がキャッチできないと仕事にも影響をするし、ミスコミュニケーションも生じてパフォーマンスに影響がでる。そんな分からないというもどかしさにも毎日さらされる。
また単純に英語ができればいい、という問題ではなくてその上にコミュニケーションも乗っかってくる。いかに自分の主張をうまく伝え、議論していくかといった能力も問われる。
みんなが言いたい放題のミーティングにおいて、違うと思うことは違うという、相手と意見が違っても自分の考えをはっきり主張する、そんなささいなことにつまづいている自分がいる。
留学でもあんだけ苦労したのにここに来てもまた苦労している。こういう時にだけネイティブに生まれたらどれだけ楽か、ということを強く思う。純ジャパはどこまでも純ジャパなのであり、英語に苦労するのである。
5.自分の本領を発揮できない
よっしゃーバリバリ働いて出世してやるぜ!と思っていたが、上記のような違いに未だなれず今までの知識や経験を存分に活かしきれないでいる。
するとふつふつ湧いてくるのが、焦り。こうできるはずなのに、という根拠のない自分への期待が未だそれを満たせない自分への焦りとなさけなさとなって返ってくる。
6.プライドは紙くず
これだけの負担がかかるともはや今まで自分が積み立てて来たものがすべて爆風に吹っ飛ばされて紙くずになる。
すべてがまっさらになった状態でまた積み直していかなければならない。まさにプライドなんてクソ食らえ、ですよ。
大変さというか自分の弱さと器の狭さを露呈しているような・・・でもやっぱり文章にして書くと普段感じているもやもやが晴れるような気がしなくもない。そのすっきりした分、また困難に立ち向かおうという気力が少し湧いてくる。
3ヶ月後、1年後(まだいるのか?)の自分はどのようにこうした困難を捉えるのだろうか。あんな苦労は屁でもなかったと思えるような自分になっていたい。
海外で働きたい・働く人へのおすすめ本
開高健ノンフィクション賞受賞作家による本。パリの国連で働いていた著者が、現地で活躍する日本人のストーリーをまとめたエッセー。フランスやパリというワードに興味がない人でも、楽しめる。
日本で働く5人の日本人が海外就職するまでのエピソードを集めたもの。小説なのだが、妙にリアルがあって面白い。海外就職を考えている時に、出会えたらなとよかったと思う一冊。