米ハーバード大からも留学にやってくる「ヘブライ大学」に留学してみたら

留学経験者が語るイスラエル、パレスチナ留学のススメでは、イスラエル&パレスチナの留学がどのようなものかという入門編を書いたが、よりコアな人に向けて(といってもほとんどいないと思うが)ヘブライ大学への留学がどのようなものだったのかをお伝えしたい。

というとおまえは親イスラエル派なのかと、白黒つけたがる一部の人には言われるかもしれないが、そうではなく、すごいものが埋もれたままではいけないので、そのすごさをもっと世間の人に知ってほしいというのが本当のところである。

イスラエル留学が、「辺鄙な場所への留学先」から「価値ある留学先」となることを願ってやまない。

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ヘブライ大学、スコープ山キャンパス(公式サイトより)

あの超有名ハリウッド女優も通った大学

あまり知られていないけれども、あの超有名ハリウッド女優、「ブラックスワン」やDiorでおなじみのナタリー・ポートマンもヘブライ大学大学院で中東問題を研究していたのである。ちなみに彼女の生まれはエルサレムで、ハーバード大学にも通っていたというまさに才色兼備の女性。

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Dior公式サイトより 

そんなハリウッド女優がかつて勉強をしたところで、同じ景色をみながら勉強できるというのは、なかなか日本の大学では味わえないものである。

アインシュタインも大学設立構想を支持

自身もユダヤ人であり、世界的に有名な科学者アインシュタインは、ヘブライ大学設立の構想を大きく支持し、彼の遺産や研究所、そして私物を含む5万点以上の品を大学に寄贈している。

その私物には、複数の女性に送ったとされるラブレターも含まれている。それらは、ほとんどがデジタル化されており、ヘブライ大学内のオンラインアーカイブから見ることができる。アインシュタインのプチ博物館ともいえよう。

ハーバード大からも留学生を引き寄せるわけは?

ズバリ中東で最もランクが高い大学だからである。実際に世界大学ランキングをみても、イスラエルでダントツトップなのはもちろんのこと2016年の大学ランキングでは日本の私大トップ早稲田、慶応も抑えて世界ランキング26位にランクインしている。

実際に私が留学した当時も、ハーバードやスタンフォード大学など名だたるアメリカの大学から留学生がやってきたことにびっくりしてしまったことである。ハーバードの学生と留学できるなんて人生においてもこの先にもないだろう。というわけで、アメリカのトップ大学の学生にとっても、留学先となる由緒ある大学なのである。

山暮らしから逃亡するためブライ大学留学

とはいえ、このヘブライ大学のすごさを知ったのは実は留学をしてからであるし、入るまではそんなレベルの高い大学だとも全く知らなかったので、苦労の連続であった。

そもそも私が当初留学していたのは同じイスラエルのハイファ大学である。おそらく日本から留学する人のほとんどはこのハイファ大学にいくのではないのだろうか。

というのもハイファ大学は秋田大学や早稲田大学など国際交流が盛んな日本の大学のほとんどはこの大学と提携を結んでいるからだ。

さらに他にも、同様の文系大学、ヘブライ大学やテルアビブ大学などと比べると、TOEFLのスコアがそこまで高くなくても入れる大学なのである。

私も、留学前の自分のTOEFLスコアの点数の低さに甘んじてハイファ大学(というかイスラエルの大学に留学できるならなんでもいいと思っていた節があった)を選んだのである。

しかし個人的な感想からいうと、私にとってハイファ大学の生活はかなりハードだった。なにせ、大学とその寮は、田舎の山の上にあるのだ。イスラエルの第3の都市とはいえども、街はそんなに大きくなく娯楽もほとんどない。スーパーにいくのにも、わざわざ山の上からバスに乗って10分ほど行かなければならない。

さらに週1回あるユダヤ教の祝日、シャバットの日には公共の交通機関がストップするので、事実上山から出られない軟禁状態になる(これはあくまでも一個人の意見)。気軽に散歩ができない、町を出歩けないというのは、結構辛いものがある。

そんな鬱屈した生活とおさらばしたい、このままでは気が狂ってしまうと本気で感じた私は、留学先の大学を変えようとわざわざパレスチナ自治区まで行きTOEFLを受けなおしたのである。

普通の留学ならばまず起こり得ないだろう、留学中に留学先の大学変更である。幸運にも、私の場合は私費留学だったため、大学先を変えることができたのである。これが提携プログラムに参加していたとしたら、変更の余地はなかっただろう。

その結果なんとかギリギリのTOEFL点数をゲットし(というか2点ぐらい足りなかった)、なんとかヘブライ大学の留学生プログラム「Rothberg International School」に入学することができたのである。

ロスバーグという名前からして、ホグワーツ魔法学校のような格式高い感じを受けるのは私だけだろうか。ちなみに豆知識だが、「〜バーグ」というのはユダヤ系の名前である。Facebookのマーク・ザッカーバーグやシェリル・サンドバーグもユダヤ人である。

そんな思いつきでの行動だったので、前大学の返金手続きやら、ヘブライ大に入学したものの学費がギリギリまで払えず授業を受けられないかもしれないというてんやわんやの中で授業を開始することになった。

当時の親とのメールのやり取りをみると、自分勝手なことをしてすみませんと謝りながらも親に前大学よりも高い高額な学費を請求し、送金してほしいなどとお願いするあつかましい自分がいた。

今になってみると、こんな身勝手な自分に文句も言わず、「やり残しがないようにがんばれ!」といってくれ、自分がやりたいことをやらしてくれた親には感謝しても感謝しきれない。

あと当時は1ドルが86円ぐらいの超円高の時代だったため、今よりもお得に留学できたことが唯一の救いである。

アメリカ人留学生に囲まれるハードな大学生活

しかし、山暮らしからおさらばしたいという単純な動機で入り、ついていけるほど甘くはないヘブライ大学生活だった。

初日は留学生全員とかんたんなミーティングをしたのだが、アメリカ人が95%以上を占めており、みなが「どこどこ(有名どころ)の大学出身です」という中、私一人だけが「日本の早稲田です」といっても誰にも通じないのである。

ああ、早稲田っていうのも世界じゃ無名大学なんだなと改めて思い知った瞬間であり、なぜか誰も知らない大学からきてしまった自分が恥ずかしくなった。そして大多数のアメリカ人の輪になじめず、一気に孤独を感じる瞬間でもあった。

授業でもネイティブで自国と同じような感覚で授業を受けるアメリカ人達に対し、英語もTOEFLギリギリの点数しかとれない純ジャパにとっては、アメリカ人との授業はまるで軍隊の訓練のように辛かった。なぜアメリカ人ばかりの大学を選んでしまったのかということを後悔することもしばしばだった。

それでも、授業のレベルは確かに高かったし、蔵書が豊富な大学で多くの書物を手に取りながら勉強できたことは非常に大きな経験となっている。実際いくつかの授業では、そこそこの成績をとれたことをおぼろげに覚えている。

そして苦しかったなりにも、自国の大学よりもさらにレベルの高い大学で、勉強できたことも今では1つの支えとなっている。

世界遺産のある町で価値ある留学

もう1つ学生生活以外で貴重だったのは、私生活である。大学の寮にはもう住みたくねえ!という思いから、Craigslistでシェアルームを探し出し、大学からちょっと離れた場所で生活を送っていた。大学以外の人たちと暮らすのはまた新鮮であった。

信仰心が高いユダヤ教のイスラエル人ルームメイトや、ユダヤ人なのに自称クリスチャンを名乗るベーグル工場で働くアメリカ人など、普通の大学生活では会えない人たちと暮らすことで学ぶことも多かった。大学の寮だとこうした信仰心が高い現地のイスラエル人と暮らす機会はほとんどないからだ。

またエルサレムは、3宗教の聖地であり、世界遺産にもなっている旧市街がある。世界遺産があり、いつも世界中から信仰深い信者が観光に訪れる土地に住むのは、決してほかではできない経験だろう。

私は無宗教だと主張する日本人に近く、エルサレムの聖地のありがたさなんか信者としてこれっぽちも感じていなかったのだが、エルサレムの不思議な引力に惹きつけられてやってくる不思議な人々を観察するのが娯楽のようなものになっていた。

街中で円陣を組んで、ギターとともにカントリー風の歌を歌う韓国人のクリスチャングループや、いい年の黒ずくめの男達(ユダヤ教の正統派)が、これまた肩を組み円陣となって、音楽にあわせてハイテンションで踊ったりと、それはもう変人ずくめで混沌とした町だった。

というわけで、ハイファ大学で山ごもりするよりも、刺激に満ち溢れた生活を送ることができたのである。

ちょっと古いが、ヘブライ大学の感じがわかる大学紹介動画

大学をベタ誉めしている感じがするが、実際通ってみると彼らの意見に賛同してしまう。イスラエル留学ならぜひヘブライ大学をおすすめしたい。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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