留学経験者が語るイスラエル、パレスチナ留学のススメ

「サムライインキュベーター」など日本のベンチャー企業が中東のシリコンバレーと呼ばれるイスラエルに進出することで、徐々にイスラエルがスタートアップ国家イスラエルとして注目を集めるようになってきた。

それにつれて、イスラエルで働きたいと思う人が出てきたのは嬉しい反面、未だイスラエル留学はそこまでホットなものになっていないし、情報も少ない。


イスラエル留学といえば、昔から変わらずクリスチャンやそれに類する宗教関連の人が大半のため、イスラエル留学=キリスト教の原点に触れる巡礼留学といったイメージを与えているのではないか、というのが私の懸念である。

しかし、まったくクリスチャンとは無縁で、「中東政治」を問題が起こっているど真ん中で学びたい、と思った私としては、イスラエル&パレスチナ留学で学べることをもっと違った面からお知らせしたい。

私自身は、パレスチナのビルゼイト大学、ハイファ大学、ヘブライ大学という3つの大学に1年ちょっとという期間で通った。本来は2つの大学だけの予定だったのが、なぜ3つになったのか別の記事を参照

イスラエル&パレスチナにある大学

イスラエルで文系の学科を専攻するのであれば、ハイファ大学、テルアビブ大学、ヘブライ大学この3つが主な選択肢になると思う。内容的には、どこでも似たような科目を揃えているので大学によって学ぶことはそこまで大きく変わらないと思う。もちろん大学や教授のレベル、施設などによって質は異なるが。

ヘブライ大学(エルサレム)

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3宗教の聖地であり、世界遺産に登録された旧市街があるエルサレムに位置する。世界大学ランキングでも常に上位に入っており、イスラエルでトップレベルの大学。

テルアビブ大学(テルアビブ)

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イスラエルの首都、テルアビブに位置する大学。ビーチやショッピング街が充実しておりアーバンライフが好きな人にとっては楽しいキャンパスライフを送れるだろう。町の宗教色はかなり薄い。

ハイファ大学(ハイファ)

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アラブ人とユダヤ人が平和に暮らす町として有名なイスラエルの第3の都市、ハイファに位置する。のんびりした場所で勉強に集中したい人にはおすすめ。

また理系であれば、ハイファにあるイスラエル理系大学トップのテクニオンだろう。ハイテク国家イスラエルをささえる優秀なエンジニアたちのほとんどがこの大学から出ているといっても過言ではないほどである。こちらは、完全に理系向けなので、工学系の授業がメインである。

テクニオン大学(ハイファ)

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ハイファ大学の近くにある、理系のトップ大学。

パレスチナ留学のメッカといえば、ビルゼイト大学である。留学生向けのコースがあり、アラビア語コースだけでも専攻できるし、そのほかにもパレスチナに特化した授業を専攻することが可能。しかしイスラエルの大学と大きく違うのが、イスラエルの大学の1セメスターが5ヶ月なのに対し、1つのセメスターが3ヶ月しかないということである。

イスラエルの大学であれば、留学ビザが下りるのだがパレスチナではイスラエル政府がそれを認めていない。そのため、留学ビザではなく普通の観光ビザが適用されるので、観光ビザが有効である3ヶ月でセメスターを区切っているのである。しかしその分学費がかなり安くなる。

ビルゼイト大学(パレスチナ自治区、ラマッラー)

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パレスチナ自治区の中心都市、ラマッラーから車で15分ほどの場所にある。世界中から留学生があつまる国際色豊かな大学。

またパレスチナのナブルスにある「アル・ナジャハ大学」ではアラビア語を履修するコースもあり、実際の留学生たちがアップしているブログが非常に参考になる。個人的に、住むなら古都とも言え、食べ物が美味しくて安いナブルスの方がラマッラーよりも良いと思っているが、留学生向けで語学以外のコースがあまり充実していないのが残念なポイントである。

イスラエル&パレスチナ留学で学べること

先ほどにも述べたように、宗教だけではなく実に様々なことが学べるのがイスラエル&パレスチナ留学なのである。もちろん現地語(イスラエルはヘブライ語、パレスチナはアラビア語)ができれば専攻する科目の種類は広がるが、ここは留学生向けのプログラムに絞ってお話ししたい。

国際法、政治科学、社会学、心理学、経済学など幅広いコースが用意されている。私が留学した当時は、特に平和構築、とくにイスラエルと周辺のアラブ諸国との国際政治に関する授業が留学生の間でも人気があった。

私が専攻したもので特に印象に残っているのは、近年のパレスチナ人による自爆テロも含めたテロの歴史を学ぶテロリズム授業や、イスラエルの移民社会から学ぶ移民の社会適応プロセス、そしてジャーナリズムの授業である。

また自分たちのルーツ探しのためにやってきたユダヤ系アメリカ人留学生の間で人気だったのは、イスラエル、ユダヤ人の歴史やユダヤ教学などである。私も、1つだけイスラエルの歴史に関する授業をとったが、イスラエル国家としての歴史はまだ60年ちょっとと浅いのだが、ユダヤ人の歴史としては非常に長いので、国を持たなかったユダヤ人がいかにして自分たちの国家を作ったのか、という歴史を学ぶことはとても興味深かった。

一見すると中東ってなんかようわからんことが起こっているなあとかなんでイスラエルとパレスチナっていつもドンパチやっているのだろうと思うのだが、こうした歴史を学ぶことでその理由がわかるのも面白い。

一方で私が通ったパレスチナのビルゼイト大学では、コースの幅は少ないもののパレスチナ人の歴史、文化やアラブ社会における女性の地位などどちらかというと社会学的なコースがメインである。パレスチナに特化した授業はイスラエルの大学ではやっていないので、パレスチナとイスラエルの両方の大学で勉強することで、両者のあり方が見えてくる。

そのほかにもヘブライ語(イスラエルでしか使い道はない)やアラビア語の語学授業もある。イスラエルの大学であれば、両方学べるし、ヘブライ語であればまったくヘブライ語にふれたことがなくても、1年でそこそこしゃべれるようになる。

サマープログラムで気軽にイスラエル&パレスチナ留学

イスラエル&パレスチナで勉強してみたいけども、長期の留学は難しいという方には、サマープログラムの利用をお勧めしたい。だいたい7~8月にかけて2週間ほどで行われる集中講座みたいなものだ。

先にあげたビルゼイト大学も含めほとんどの大学で実施している。内容としては、野外講習という名の観光地巡りやイスラエル(もしくはパレスチナ)の歴史の座学である。

ハイファ大学のサマープログラムに参加したが、以外とボリュームがたくさん(サマープログラムなのにかなり課題がある)なので、勉強しながら観光をする分にはかなり良いものである。しかし、私が参加した回では90%以上がアメリカ人だったのでかなり精神的に疲れた。もちろんアジア人なんていない。

英語も学べる環境

海外留学といえば英語習得というのが一番の大きな目的の人が多いのではないか。英語といえばやはり本場のアメリカやイギリスが人気かもしれないが、人とは違う経験をしながら英語を身につけるのであれば、イスラエル&パレスチナ留学もぜひ選択肢に入れていただきたい。

イスラエル&パレスチナ留学では、留学生向けのプログラムはすべて英語である。さらにアメリカやイギリスからの留学生もいるし、教授もアメリカ人の人が多く(留学生向けの授業の場合)町の人(特にイスラエル人)は英語も流暢に話すので、英語を鍛える環境としては抜群である。

治安は大丈夫?

これは留学する人にとっては大きな懸念点になっているかもしれない。未だ、自爆テロや紛争といったイメージが強いかもしれないが、近年はそこまで治安を揺るがすような大きなことは起きていない。

私が留学をしていた2010年から2011年にかけても、エルサレムで小さな爆弾事件が1回あったぐらいなので、比較的安全といえよう。パレスチナも自らイスラエル軍と対峙するデモ地域なんかにいかなければ、問題はない。メディアのセンセーショナルな報道のせいで実態よりもかなり誇張されて危険なように見えているだけである。

アメリカだって銃乱射事件があるし、フランスやイタリアに留学していた友達はいずれもスリにあったという話を聞いて、逆に私にとってはそうした国の方がよっぽど怖いと思う。

なぜパレスチナ&イスラエル留学をすすめるのか?

もしかしたら個人的に人生の転機になったので、過度にこの地域の留学をゴリ押ししているのかもしれない。しかし、みんな(というか日本人)がいかないような場所にあえていくことで、違った経験や視点を得れるというのは何物にもかえがたい。

さらに行ってみて初めてわかったのが、日本では「辺鄙なところに留学するんですね」などと珍しがられるものの、アメリカ人やドイツ人にしては結構普通の留学先であるということがわかったり。

そして世界では一般常識であるそれぞれの宗教の根本的な考え方について触れることができたことも、その後の人生で大いに役立っている。もし私がこの地域に留学をしていなかったら、未だにイスラームのことなんてわからなかったし、ユダヤ教の不思議な人々の存在なんて知らない人生を送っていただろう。

と同時にメディアの報道と現実の大きなギャップ、それ以上に自分の目でちゃんと現実をみて判断することの重要性をつくづく感じた。