性欲ゴーゴーパラダイス in 歌舞伎町

ソマリアのモガディシュを歩くよりも、警戒心と好奇心を高め歩いてみた身近な辺境「歌舞伎町」。日本の家の狭さに息苦しさを感じ、思いつきで1泊2日の歌舞伎町旅行を敢行することにした。歌舞伎町に泊まるというと、いかにもいかがわしい場所なのか?とよく聞かれるが、否定はしない。その通りである。


老若男女に平等な街「歌舞伎町」

別に歌舞伎町に泊まりたかったわけではないが、そこそこのスペースがありおしゃれなホテルといえばここしかなかったのである。

それだけ都内のホテルは選択肢が狭いのだ。とはいえ、ラブホに泊まったのではなく、普通の外国人観光客が利用するような少しだけ洗練された通常のホテルだ。

普通のホテルだけれども、その一角を除けば皆がイメージする歌舞伎町が周りを取り巻いている。むしろそのホテルが歌舞伎町にあること自体が、違和感ありありでまったく違う空間を醸し出していた。

例えるならば渋谷の街で巣鴨にいそうなおばさんたちの団体を見かけるようなものである。

周りはラブホやそれを匂わせない「女子会におすすめ!バリ風のホテル!」などと謳ったホテルが立ち並ぶ。実際に私はその外観と謳い文句に騙され、

「ははあ、歌舞伎町にもこんなバリ風のおしゃれなホテルができたんだな」

と純粋に信じてしまったのだが、夜歩きをしているとそのホテルから男女のカップルが出てきたので、「なんだ、ラブホかいな」とすっかり騙されてしまった。

普通のホテルを見つけるのがあんなに難しいのに、ラブホはこんなにある。もしかしたら、ラブホの方が回転効率がよく経営的には儲かるのかもしれないと思った。

イスラームという性が隠される世界からやってきた私にとって、歌舞伎町はパンドラの箱にしまわれていた門外不出の、欲望や性がありありとむき出しになった街だった。

ドバイの人々が「え?男女のまぐわい?そんなものありませんよ?」などとすまして、本当にそんなものがこの場所には存在しないのだろうかと思わせるのに対して、歌舞伎町は爽快だった。

男子を誘う無料案内所や黒子たち。この街は男子だけでなく、女子にも優しい街だ。女と見間違えないばかりの、ホストという生き物の顔写真がずらりと並んでいる。

この街は、女にも性をお金で買える(そりゃあ高くつくだろうが)ことができるらしい。金で性を買う、ここはそうした欲望も金で簡単に処理できる不思議なコンセプトを持った街だった。

ドバイには、男子向けの売春婦なるものはいるが、女子向けはないのである。そのことを不満に思っていた私は、歌舞伎町は男女平等な街だと思った。

歌舞伎町は男女平等だけにとどまらない。老若男女すべての人間の性を受けいれる場所らしい。歌舞伎町の夜歩きをしていてみつけたのが、「熟女専門店」である。

あらまあ。こんな幅広い志向を受け入れる場所など他にあるのだろうか。熟女専門店なだけに、店の前に立つ黒子も白髪のじいやであった。徹底して熟女好きを迎える準備をしているところが素晴らしい。

ソマリアよりも汚い街!?

しばらく夜の歌舞伎町をうろうろすると、私は見てはならないものを見てしまった。

コンビニの前を堂々と人間のようにあるく黒光りゴキブリである。ギョヘ!?一体どんな街を歩いたら、街中を堂々とあるくゴキブリとこんにちは、をしてしまうのだろう。

その黒光りはいかにも人間らしく振舞い、歩道を行儀よく歩き「私はこれからコンビニに行くんですよ」などと言いかねない様子だった。

あまりにも堂々とした黒光りの様子と、黒光りが現れるほどこの街は汚いのかという事実に仰天した。ソマリアやパレスチナでもそんな場面に出くわしたことはない。やはり、歌舞伎町はどこか異世界である。

天国の入り口、「ゴールデン街」

ふとドバイで禁じられていたもう1つの欲望、「酒」を解禁してみようと思いゴールデン街を訪れた。

信じられないかもしれないが、居酒屋や飲み屋が立ち並ぶ光景を1年近く見ていない人間にとって「ゴールデン街」は、天国への入り口のように見えてくるのである。

進んでも進んでもあるのは、自由に酒が飲めるバーなのだ。そんなバーがこんなにびっしりと密集しているなんて・・・あの時の感動は何にもたとえることができない。ただただ、本当に名前の通り金色の光ですべてがピカピカ光っていた印象はある。

ひと昔前だと、「外国人お断り」などといったビラがあったように思うが、今では「外国人歓迎」になっているところもまた面白い。時代と同じく人々の気持ちも変わりやすいらしい。バーをのぞくと、確かに外国人が多い。

よし、私もいっちょやるか、と思ったがやはりチキンなので狭い店内で一人入ることははばかられた。

一体何を話せばいいのだろうか?

というわけで、一通りゴールデン街を舐めるように見て回ったところでホテルへ帰る。見物するだけ、それがゴールデン街を訪れた時の、毎度の儀式のようになっている。

普段ならあの街が発する雰囲気にのされて、決して近づくことはないのだが、「観光客」としてきてみるとなかなか面白いものがある。他の街では見られない、びっくり人間たちもたくさんいるし、意外な発見もある。

力士のようにめちゃくちゃ太った女の子が風船を持っていたり(目的が全くもって不明)、全身ピンクの初老が「おいでおいで」していたり(一体なんの店なのだろうか)。見るたびに首をかしげてしまうような人間たちが、普通に佇んでいるのだ。そして歌舞伎町の住人たちはそれを街の一部と同じように捉えて、まったく特別視していない。

ドバイで抑圧されてきた欲望をすべて詰め込んで反映している歌舞伎町を見ることはとても興味深かった。まるでまったく対岸にある世界を渡り歩いているようだった。対岸に渡ることで、いつもの世界がまた別の意味をもって見えてくる、不思議な歌舞伎町歩きだった。