イスラエルの最大貧困地区「ビネイブラク」で食べ歩きツアーに参加してきた

私が大ファンである「超正統派」たちが多く住むという「ビネイ・ブラク」。イスラエルの首都、テルアビブ中心地から車で20分ほどいった場所にある。ここはエルサレムにある超正統派地区のメア・シェアリームよりも多くの超正統派たちが住む、国内最大の「超正統派」スポットにして、イスラエルの最貧困地区の1つに指定されている。

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ビネイ・ブラクのメインストリート

一生働かない!1時間でスピード婚!ネットは一切使わない!謎に満ちた生活を送る一派を追うという別の記事で書いたように、多くのヒモ男子の存在のためその家族は貧乏生活を強いられている。いや、信仰のためならむしろ喜んで、というぐらいの明るいビンボーだろうか。

貧困地区というと、治安が悪そうに思うかもしれないが道を歩くと子どもや女性で溢れかえっている。しかもビンボーなのにあちらこちらで買い物をしている人が多い。これも彼らを明るいビンボーと呼ぶ所以である。

そんな最貧困地区で、なんと食べ歩きツアーが行われると聞いて早速参加をした。ツアーガイドは、日本で鍼灸を学んでいたという夫婦だ。この夫婦の面白いところは、もともとは宗教に熱心ではなかったということ。それが何の導きか、超正統派の信仰に真意を見出し、超正統派になるため17年前からその道を歩んでいるのだという。

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左からガイドのイツァックとガリア(Go Telaviv.comより)

確かに格好からして超正統派ではない。だが、着実にその道の人なんだなという雰囲気はあった。2月の冬シーズンということもあり、海外からの観光客は少ない。私以外は全員イスラエル人である。よって民主的にここはヘブライ語でツアーが開催されることになった。一応英語の翻訳もしてくれたが、それでも十分に翻訳されていないところが多々あったので、ここにきてもああ、もっとヘブライ語を勉強せねばと痛感した。

さて貧困地区で食べ歩きツアーとは、なんともアンバランスなツアーである。ビンボー、貧困というとさぞかしみなさん切り詰めた食事をしているんでしょうと思われるかもしれない。が、「シャバット」と呼ばれるユダヤ教の安息日が始まる金曜の夜には、これがボンビー飯!?と疑ってしまうほど、彼らの食卓はまるでホームパティーかのような品揃えになる。それを狙って、食べ歩こうという趣旨なのである。

ツアー出発前に出されたのは、「ハラ」と呼ばれるパンである。大家族の超正統派を考慮してかパンにしては異常なでかさである。これを各自ちぎってまず食べる。10人がひとちぎりして食べてもまだ余るぐらいの大きさである。しかもこれがミルクパンのようにほんのり甘くクセになる。そして文字通りパンを食べ歩きしながら、ぞろぞろと一軒目の店に向かう。

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最初の食べ歩きスポットにて。ツアー参加者たちと右端の男性がガイド。

まず出されたのは、魚屋?のような場所で、サーモンやら塩漬けされた魚がメインのもの。ウォッカで乾杯じゃ!となるが、透明な酒はどうにも受け付けないので丁重に断る。

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スモークサーモン、焼きサーモンなどが並ぶ

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一番おいしかった塩漬けされた魚

しかし、なんだこのうまい魚たちは。サーモンはいうまでもなく、この塩漬け魚がちょっと塩辛いけどめちゃくちゃうまいのである。すでにこの時点でお腹がいっぱい。

ああ、もう食べるのがキツイ。食べ歩きなのに1件でKOしている自分て・・・と思いながらも次の店へ。次の店は食堂屋さんで、シャバット前に買いだめをする人や食事をする人で溢れかえっている。

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シャバット前の駆け込み需要で混雑する店内(シャバットになるとどの店も閉まる)

ある程度、ユダヤの料理は食べてきたつもりだが、皿の上には見たこともない料理が数種類並んでいる。

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ほんのり甘い芋のキッシュのような味がした

ちなみにこの食べ歩きツアーの食事は、ヨーロッパ系の超正統派料理が中心。一口にユダヤ教といっても、ヨーロッパだったり、イラン、イエメン、モロッコなど様々な方面からユダヤ人が集まっている。

というわけで、その家系の出身によって食べ物も大きく異なる。イスラエル料理といえば、ファラフェル、ひよこ豆のペーストなどといったものが代表的だが、こうしてユダヤ人という切り口で見ると実に多彩で面白い。ツアーに参加した世俗派ユダヤ系イスラエル人でさえも、「これ、何の料理?」と聞くぐらいであったのだから。

美味しいのだが、すでにお腹がいっぱいのためグロッキーな状態になる。もはや、楽しむ食べ歩きというよりも気合いで食べきる大食い選手権と化している。これで終わりかと思いきやまだまだ続く。

次に向かったのは、ベーカリーショップ。見た目も良く食欲もそそるミニスイーツたちだ。空腹時なら喜んで食べるところだが、すでに物理的には腹一杯、目で見るだけでも満足できる状態だ。チョコパンのような甘いパンを1カケラだけ押し込み、食後のデザートをしめる。

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この食べ歩きツアー、単なる食べ歩きではなくきちんとユダヤ人たちが実際に食べる「シャバットディナー」を網羅しているところがすごい。まずパンをいただき、前菜となるサラダや魚、そしてメインディッシュ、デザートとフルコースである。こんなフルコースを家族みんなで食べたらそりゃ幸せだよなあと独身女は一人思う。

もう終わりだろ(別にツアーが早く終わって欲しいわけではない)と思っていたら、次はイスラエル最大のパン工場にいくぞ!と言われ皆で車に乗って移動。このパン工場は、金曜日のみ稼働しているという。

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シャバットで食べられる「ハラ」がどれだけ消費されているのかがわかる。うーんさぞかし焼きたてのパンはうまいんだろうなあと思いつつも、もはやデザートも入りきらないお腹なので、ただじっと他のツアー客が楽しそうにパンを買うのを見ているだけである。

食べ歩きツアーと言っても単に食べるだけではなく、ビネイ・ブラクに住むユダヤ人たちの習慣や微妙に違う服装の違いなど側から見ただけでは得られない情報も得られるのがこのツアーの魅力だ。

超正統派の聖地、「ビネイ・ブラク」で食べ歩きツアー
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ツアー開催日:毎週木曜の夜(夏季、冬季で開始時間が異なる)
ツアー費用:2時間半~3時間で175シェケル(実際は120ぐらいだった)
ツアーの予約はこちらから

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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